研究概要 |
この研究の成果は,新たに提案した保水性試験方法が大変有用な手法であり,試験時間の大幅な短縮を実現できることを明らかにしたことである。 不飽和土の保水特性と浸透特性は,降雨時の斜面安定問題などに適用されるだけでなく,不飽和土の特性は,近年では土壌汚染問題などへの適用に関しても注目されている。不飽和地盤として解明すべき問題は少なくないと考える。しかしながら,不飽和土の試験全般に言えることではあるが,従来の試験法の欠点は,非常に長い時間が試験に必要となることである。透水性の良い砂質土の場合においても,従来の保水性試験法は少なくとも数日から10日程度の試験時間を必要とする。また,粘性土の場合は,約1ヶ月以上の試験時間を必要とすることも少なくない。このような状況で,実験データの蓄積は進んでいるとは言えない状況にある。それは試験装置が普及していないことも原因のひとつである。 この研究の目的は,土の保水性試験をより迅速に行うための新試験法を確立することである。従来型試験法と新試験法は圧密試験における段階載荷型と定ひずみ速度載荷型の違いと考えると理解しやすい。試験としては供試体にサクションを連続的に負荷する新しい手法を採用し,新試験法に関する試行錯誤的な研究が進められた。その結果,従来の保水性試験法に比較して,試験時間を大幅に短縮できることが明らかになった。また,従来の試験法では困難であった排水過程と吸水過程を繰返す試験もまた可能となっている。 この新手法と試験装置の普及は不飽和土の研究の今後の発展に大きく寄与すると確信している。
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