研究概要 |
約2年間の潮間帯干潟上での水位・流速・濁度の連続観測を実施し,底質輸送フラックスに対する潮汐・波浪の影響を定量的に検討した.潮間帯干潟上の現地観測では,潮位変動に伴って計測器が水没と干出を繰り返すため,干出時はデータが欠測し,その時系列は不連続となる.そこで,新たに潮汐位相平均手法を提案し,底質輸送フラックスに及ぼす外力の影響を分離するとともに,突発的な外力変動が生じた場合の底質輸送特性について調べた.観測場所は熊本県白川河口右岸の潮間帯干潟である.堤防から約1,040mのA点において,2004年7月から水位と流速は2Hz,濁度は10分バーストで1Hz・20秒間の連続観測を継続しており,現在までに1,174潮汐分のデータを取得した.2005年10月からは,堤防から約400mのB点においても同様の観測を開始した.底質輸送フラックスに対する1)平均的な潮汐,2)大潮・小潮等の潮位差の変動,3)波浪,それぞれの影響を検討する場合,水没と干出の繰り返しの影響でフラックスの時系列は不連続であり,スペクトル解析の適用は困難である.そこで,水位・岸沖流速,沿岸流速,濁度の実測値を20秒間の時間平均値と残差に分け,平均値を潮汐成分,残差の標準偏差を波浪成分と見なし,それぞれの時系列を1潮汐毎の水没時間で無次元化した時間軸上で重ね合せ,その平均を潮汐位相平均と定義した.主要な結論は以下のとおりである.(1)潮間帯上の底質輸送フラックスに対する潮汐・波浪の影響を調べるために潮汐位相平均手法を提案した.(2)平均的な潮汐に伴う潮間帯上の濁度変化は,流れに伴う濁度の移流成分が支配的であるが,台風時には高波浪に伴う底質の局所的な巻き上げが卓越する.(3)白川河口干潟上の底質輸送フラックスの移動方向には,上げ潮・下げ潮時は潮汐の影響が支配的であるが,満潮時には白川の河川流出の影響を受ける.
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