研究概要 |
本研究では,富栄養化が著しい手賀沼における総合的流域水質管理の実現を念頭にして,現地観測と数値計算,GISに基づいて手賀沼流域の水環境システムの実態を多面的に検討するとともに,流域水・物質モデルを確立することを目的とする.具体的には,以下の5点を行った. 1)流域や河川,湖沼における汚濁物質動態を調査する上で必要である新たなモニタリング方法を考案した.ここでは,市街地の面源負荷調査法(模擬降雨法),河川・水路内の堆積汚泥巻上げ量計測装置,掃流砂・土砂沈降量計測用転倒マス型測器である.このうち,転倒マス型測器に関しては特許申請中である. 2)流域における汚濁負荷解明のために,面源(路面・屋根面)負荷調査を模擬降雨法等により実施した.その観測結果とGISデータに基づいて,発生源(大気降下物や自動車交通など)データを考慮した非定常路面・屋根面堆積負荷モデルを構築するとともに,手賀沼流域からの汚濁負荷に対する路面・屋根面起源の寄与率がおよそ30%となることを明らかにした. 3)河川における汚濁負荷量(=流量×汚濁物質濃度)の計測法を高度化するために,ADCPや光学式濁度計の使用方法,設置場所,データ解析法等について検討するとともに,それらの成果に基づいて,河川経由の汚濁負荷量の長期連続モニタリングを実施した. 4)湖沼における汚濁物質生産過程でキーとなる栄養塩溶出現象やCOD(有機物)内部生産過程に関する現地調査と室内実験を実施した.栄養塩溶出については,底泥からの溶出のみならず,巻上げに伴う浮遊土砂からの溶出が大きな割合(全体の30〜50%)を占めることが明らかとなった. 5)流域からの汚濁物質動態をモデリングするうえで有用な河川・湖沼モデルを構築した.具体的には,複雑な河道平面形にも対応可能な水平σ座標系モデル,河川から湖沼まで連続的な数値計算が可能な河川-湖沼結合モデル等である.
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