研究概要 |
道路交通の安全性向上に資する研究を学術的な観点から概括すると,1)交通現象分析に基づく危険要因の把握,2)安全性評価指標の確立,3)交通安全改善施策の効果予測手法の構築に関するテーマの遂行が望まれている.この点を踏まえ,本研究ではある一定の距離を有する道路区間を対象として,その交通流を連続的に記録したビデオより,画像処理手法により抽出された車両走行軌跡データを基本データとして用い,交通流としての走行危険性評価手法の構築を試みてきた.主な研究内容は,次の3点に要約される. 1.対象道路区間における事故形態に応じた定量的コンフリクト評価手法を構築するとともに,各地点における交通事故発生件数とコンフリクト指標との関連性を吟味し,走行危険度評価の観点から定量的コンフリクト評価の意義を確認した. 2.上記1.で構築したコンフリクト評価手法を活用し,潜在的に事故危険性の高い走行車両を抽出するとともに,画像データより得られる車種・車両走行位置・車線変更の有無等の情報もあわせ用いて,事故危険度の高い状況に至る要因・過程について明らかにしてきた. 3.交通流の安全性評価ならびに道路デザインにも利用可能なミクロシミュレーションの開発を企図して,車両走行挙動の分析・モデル化を試みてきた.車両走行軌跡データに基づき,統計分析手法ならびにソフトコンピューティング手法を適用して,ミクロレベルの車両走行挙動モデルを構築した.車両走行モデルには追従走行モデル,車線変更モデル等が含まれるが,従来型モデルと異なり車間距離が異常に接近し,潜在的な事故危険性が高まる状況においても対応可能なものである必要がある.
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