研究概要 |
この研究は平成16年から平成18年の3年間で,長大斜面の変位を写真計測法と網型GPSを使って検知する技術を開発するものである.長大斜面を常時観測するには粗くても簡便かつ迅速な観測法が必要である.変位の観測には通常は3次元座標が分かっている絶対基準点を仮定する.しかし実際にはこれを現地に設置するのは難しい.そこで最近実用化されたリアルタイム網型GPSを使って,絶対基準点をローカルに作ることができるかを周辺技術とあわせて研究した.主たる成果は次のようである. 1.網型GPSの安定性一基準局として電子基準点を使い,リアルタイム網型GPSの安定性を1年以上に渡って実験した.野外実験では有望な結果を得たが,一方で電子基準点に有意の誤差があることが疑われた.このため3年目は写真計測のシミュレーターを開発し,これによって受信機の位置と撮影の形態,計測精度の関係を調べた. 2.写真計測を使った変位計測の網設計-必要な変位検知力を与える写真計測の網の強さを設計する数学的手続きを導いた.網の強さを精度,感度,信頼性の観点から評価して定式化し,モデル実験で評価式が妥当であることを確認した. 3.変位位置を検知するための検定法-斜面に設置した多数のターゲットのどれが動いたかを検知する仮説検定式を導いた.検定の妥当性をモデル実験で示した. 4.画像処理に関する研究-野外の写真計測に伴う2つの問題を扱った. (1)計測を劣化させる不良ターゲット像を自動で検知する方法を研究した. (2)データ量を減らすため,JPEG形式で精度が劣化しない圧縮範囲を調べた. 5.写真計測の応用-写真計測をコンクリート梁の載荷試験での変位計測に応用した.また原子力再処理プラントでの機器およびパイプの取替え業務に応用した.
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