研究概要 |
水系感染症起因原虫のうち最も重要な原虫クリプトスポリジウムについて,下水流入水のオーシスト濃度と,個々のオーシストの種あるいは遺伝子型をSemi-nested PCR-ダイレクトシーケンス法で調べた。下水のオーシスト濃度は1〜20個/Lの範囲にあり,幾何平均値は4.2個/Lであった。オーシスト濃度はどの年度も8〜9月に高い傾向が認められ,2005年には2〜3月にもピークが見られた。 下水から単離したオーシスト239個について,Semi-nested PCRを行なったところ,148個(62%)のオーシストで,ターゲット部位の増幅が認められた。そこで148個のすべてについてダイレクトシーケンスを行なったところ,塩基配列が明らかになったのは121個であった。塩基配列から,クリプトスポリジウムの遺伝子型別出現割合は,C.parvum genotype 1が78個(33%),C.parvum genotype 2が16個(7%),C.meleagridisが13個(5%),C.parvum VF383が6個(3%),C.sp pig1が5個(2%),C.spPG1-26が2個(1%),C.parvum CPM 1が1個(0.4%)であり,ヒトへの感染の危険性のある種あるいは遺伝子型の合計は84個であった.これは全オーシストの47%,遺伝子型が明らかになったもののうち69%に相当し,下水から分離されるオーシストの大部分がヒトから排泄されたものである可能性が高いことが示唆された。なお,遺伝子型を明らかにできなかったものの内訳は,PCR増幅ができなかった91個(38%),PCR増幅はできたもののシーケンスに失敗したもの27個(11%)であった。
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