研究概要 |
本研究では,地震ハザードマップの高精度化を目指し,豊富な観測記録が蓄積され,かつ近い将来の地震被害が危惧されている東北地方を対象として,震源・伝播経路・増幅特性の地域性を考慮した統計的な地震動評価法の開発を実施した。得られた成果は下記の通りである。 1.東北地方の強震動データベースを構築した。 2.同一データセットによるフーリエスペクトルと応答スペクトルのスペクトルインバージョン解析を行い,震源特性・伝播経路特性の地域性を把握し,短周期地震波励起強度マップ,地盤応答マップの作成を行った。その結果,海溝沿いの地震では宮城沖の高周波励起が特に大きいこと,内陸の地震では火山近辺では特に高周波励起が小さいが,それ以外の場所は比較的浅い海溝型と同程度の高周波励起特性を持つことが分かった。地盤増幅特性では,0.2Hz付近の低周波では基盤が深い新潟や山形盆地など日本海側の方が太平洋側よりも増幅率が大きいこと,ただし0.5-2Hz程度では仙台平野など太平洋側でも増幅率が大きくなること,5-10Hz付近では基盤上に薄い表層がある北上山地や阿武隈山地などで増幅率が大きいことが分かった。 3.2.の結果に基づき,震源特性のパラメータとしてモーメントマグニチュードと応力降下量を,スペクトル増幅特性のパラメータとして地盤の表層30mの平均S波速度Vs30を用いて最大加速度・最大速度・応答スペクトルの距離減衰式を求めた。Vs30によるモデル化はまだばらつきが大きいものの,応力降下量をパラメータにとりこむことで震源の高周波のばらつきを大幅に低減できた。
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