研究概要 |
本研究は,災害統計を調査,分析し,災害リスクの定量的評価,標準化工程にもとづく災害発生リスクの評価方法の確立,国内外の就業前教育の実態調査を行ったもので,建設中の労働災害減少に資すること目的としている.得られた知見を整理して以下に示す. 1)災害リスクの評価 特に,年齢別の傾向について詳細に検討した.死傷災害の発生率は就業直後の低年齢層で高いが,死亡災害の発生率は高年齢層の方が高く,被害の程度は加齢と共に高くなること,また,死傷災害発生率は作業者の経験と体力と相関が高いことなどを示した.さらに,近年,熱中症労働災害が建設作業中に多発していることから,2005年8月に,実際に工事中の現場で温度,湿度,WBGTの測定を行い,暑中期では始業時から産業衛生学会の基準やJISの基準を超えた環境にあることを確認した. 2)標準化工程を用いた災害の分析 先ず,建築統計に基づき,構造別のモデル建築物を設定し標準工程を定めた.この標準工程をもとに,1981年から2002年まで3年ごとの死傷災害発生数から工期を100(%)とした工程中の時系列の災害発生率を算定し,構造別の発生傾向について分析した.結果,この手法により構造別,工事種類別に労働災害リスクを定量的に評価することができること,この手法を用いることで長期的な災害の推移を分析することが可能であること等を確認した. 3)海外の教育システムの照査 海外約100校の教育機関のプログラムから,「コンストラクションマネジメント」,「リスクマネジメント」,「労働安全衛生マネジメント」に関連する教育の実施状況について調査した.海外では多くの教育機関で,これらが正規科目として採用されており,特に「安全衛生マネジメント」に関連する科目では,即戦力技術者養成を目的とした教育が実施されているなど,我が国よりも実務教育が充実していることが認められた.
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