研究概要 |
多層骨組の柱材は,鉛直荷重による応力に加えて,地震時に2方向の水平力が作用することにより二軸曲げを受ける.H形断面鋼柱は,強軸曲げを受ける場合と弱軸曲げを受ける場合で異なった不安定性状を示す.通常,強軸曲げを受ける場合は曲げ捩れ座屈によって不安定になり,弱軸曲げを受ける場合は局部座屈またはP-Δ効果によって不安定になる.二軸曲げを受ける場合はこれらが複合した挙動を示すと考えられるが,不明な点が多い.細長比が比較的小さい部材の場合は,降伏後曲げ捩れ変形を徐々に増加しつつ塑性エネルギーを吸収することが可能であるが,このような場合についての実験的研究は少ない.本研究の目的は,軸力と二軸曲げを受けるH形断面鋼柱の崩壊モードとエネルギー吸収能力を支配する基本的パラメータを明らかにし,エネルギー吸収能力を定量的に評価する方法を確立するための基礎資料を得ることである. 実験において,断面の主軸からθの角度をもった方向に水平力を作用させることによって二軸曲げモーメントを載荷した.θは,0°(強軸曲げ),30°,60°,90°(弱軸曲げ)の4種類とした.実験変数は,細長比,軸力比,水平力載荷方向(θ)および載荷方法(単調載荷または繰り返し載荷)とした. 本研究で得られた成果は次のようにまとめられる. 1)本研究で用いた解析法により,部材が崩壊に至までの挙動を精度よく予測することが出来る. 2)終局時の部材変形状態として,載荷面外変形と捩れ変形に関し3つのパターンが確認された. 3)斜め方向載荷試験体(θ=30°,60°)は,部材長中央でウェブ軸が載荷方向に直交する方向に近づくように捩れて崩壊した. 4)繰り返し載荷曲線より作成した正側および負側のスケルトン曲線と単調載荷曲線との関係は,強軸曲げ試験体(θ=0°)の場合前者が後者を下回り,他の試験体(θ=30°,60°,90°)の場合両者はほぼ同一であった. 5)載荷角度とエネルギー吸収量の関係が得られた.主軸方向(θ=0°,90°)載荷時のエネルギー吸収量を用いて,任意方向載荷時のエネルギー吸収量を予測することが出来る.
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