研究概要 |
本研究では,積雪地域における勾配屋根の材料設計手法を確立するための基礎資料を得ることを目的とし,屋根葺材における滑雪性能の評価方法および滑落雪の判定手法について検討した。 滑落雪屋根に多用されている塗装鋼板を対象とし、雪との摩擦係数を用いた滑雪性能の評価方法を検討した。雪との摩擦係数は低温下の乾燥摩擦から融雪過程の湿潤摩擦までを再現した滑雪実験にて測定する必要がある。摩擦係数は乾燥状態または十分な湿潤状態では安定した値となるが,若干融雪した状態では大きく変動する。よって,屋根葺材の滑雪性能は摩擦界面の湿潤状態を考慮した摩擦係数を指標とすることが望ましい。 塗装鋼板の滑雪性能に対応した3通りの勾配の屋根試験体を用いた屋外暴露試験を行った。滑雪性能に対応した勾配範囲における滑落雪状態を分析し,滑落雪に及ぼす屋根勾配や外気温の影響を評価した。その結果,屋根雪の滑落に関わる屋根勾配と外気温の特性を定量的に明らかにすることができた。 次に,屋根雪の堆積期間が長期化すると滑落雪時の外気温が高くなる現象の要因について検討した。屋根上の積雪が融解凍結を繰り返すことによって屋根雪と屋根面との実質的な凍着面積が大きくなる現象が屋根雪の滑落に影響していることを低温室内の模擬実験にて確認した。なお,凍着面積の計測はカーボン粒子を凍着面に付着させる独自の手法にて行った。 以上のような知見を基に,地域の気象データを用いて屋根雪滑落を判定する手法を提案した。屋根葺材の滑雪性能,屋根勾配,積雪開始時と積雪期間の外気温変化を用いて,滑落するために必要となる外気温条件を定める手法の基本事項を示した。なお,この手法の信頼性を確認するには,屋外暴露試験データによる検証を継続的に行う必要がある。
|