研究概要 |
オースチナイト系ステンレス鋼SUS304鋼と溶接構造用耐候性鋼材SMA490B鋼を用い,人工環境促進装置による塩分を含む酸1生雨の噴霧,乾燥、湿潤から成るサイクル腐食試験を行い,両鋼材の応力腐食割れ評価を行った。ステンレス鋼SUS304鋼では応力腐食によるき裂の発生は確認できなかったが,明瞭なリューダース帯の発生と腐食経時に伴うリューダース帯の進展があった。一方,溶接構造用耐候性鋼材SMA490B鋼においても明瞭な応力腐食によるき裂の発生は認められなかった。これは錆層の生成がき裂の発生やその進展を阻止するものと予測される。ステンレス鋼SUS304鋼に対しては今後リューダース帯の存在が静的強度や疲労に対する強度に与える影響を調べる必要がある。 また,腐食が鋼材の静的強度に与える影響の関する実験では耐候性鋼材SMA490Bと建築構造用鋼材SN490Bと比較を行った。両鋼種とも腐食試験開始直後に腐食が急激に進行し局所的に錆が剥離し,鋼材表面の凹凸状態が著しくなるが,SMA490BはSMA490Bに比べ局所的な錆びの剥離は少なく,前面が一様に腐食する傾向を示した。腐食後の両鋼材の降伏強度,及び引張り強度は低下するが,鋼材表面の凹凸が著しいSN490Bの方が耐候性鋼材SMA490Bよりもその影響は大きい。これは表面の凹凸による応力集中によると考えられるが,今後はより定量的な評価を行う必要がある。
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