研究概要 |
本研究は,既存RC造そで壁付柱に対してポリマーセメントモルタル(PCM)を用いた新たな耐震補強工法を確立することを目的としている。本工法は,2次部材として耐力評価されていないそで壁部にも補強を行い,部材の構造性能を制御しようとするものである。 平成16年度は,耐震補強工法のせん断補強効果を明らかにするために,そで壁つき柱部材の耐震実験を行った。試験体は,実大の約1/2の大きさで総数6体計画した。柱断面は300×300mm,試験区間900mm,そで壁長さを600mm,そで壁厚さを60mmとしている。補強は,上記の既存部そで壁付柱に補強鉄筋を設置(配筋)し,PCMを用いて塗り付けおり,既存部とPCM補強部の間の応力は,PCMの接着力のみで伝達している。実験結果より以下の知見を得た。 1)PCMを用いることで,補強部と既存部は接着によって一体化し,せん断補強効果が得られる。 2)その補強効果は,そで壁部のみの補強では強度の向上が,柱部のみの補強では独立柱としての靭性の向上が得られ,補強方法を選択する事で破壊モード・耐力をコントロールできる。 3)せん断補強筋量の増加と共にせん断耐力が増加し,せん断補強効果が向上する。 平成17年度は, 1)PCM材料を構造材料として用いるため,材料試験のデータを蓄積し,PCMの基本的材料物性について明確化した。 2)既存部と補強部の接着特性を評価するため,コンクリート表面に塗りつけたPCM材料の建研式接着力試験を行い,1.5N/mm2前後の高い接着強度を有することを示した。 そして,基礎実験と部材実験の結果より,補強工法のせん断抵抗機構について検討を行い,せん断補強筋とPCMのせん断補強効果について顕在化した。 以上の成果により,本研究で提案する耐震補強工法は,そで壁を耐震的に活用することで,様々な要求性能に対応する工法として実現可能であることを示した。
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