研究概要 |
近年,台風上陸数の増加や,突発性気象現象の頻発による自然災害が増加している。建築物の安全性を確保する上では,強風に対する安全の確保が重要である。本研究では,特に,強風災害発生の特徴を考慮することにより,建物内外圧の影響を考慮する点が特徴的である。 強風災害調査では,平成16年度に発生した台風,竜巻,ダウンバーストに対し精力的な現地調査を実施した。佐賀市竜巻被害,栃木突風被害,静岡県富士市突風,北海道門別町厚賀竜巻,前線による強風東京,台風06号滋賀県近江八幡市新幹線架線被害,台風16号台風18号広島,北海道被害,台風21号愛知豊橋突風,台風22号伊東市宇佐美被害と10件以上に上る。平成17年度は台風自体の上陸数が少なかったため,調査件数は少ないものとなった。しかし,これまで強風は夏から秋にかけての台風が主要因と考えられていたが,冬季に日本海側の低気圧性前線に伴い発生する突風は,秋田県,山形県で大きな被害をもたらした。これらの突風により山形県では羽越線脱線事故が発生した。現地調査を実施し,この脱線事故が,極めて局地的に発生する突風によるものであることをつきとめ,日本風工学会緊急報告会でその調査結果を公表し,突風に対する注意と,災害抑制のための調査研究の必要性をアピールした。また,米国でハリケーンカトリーナが発生し大きな被害をもたらした際,避難所であるスーパードームが被害を受け,十分な機能を果たさなかったことが問題となっている。この事故は建物の内圧の影響が無視できない大空間構造物の風に対する脆弱性の一つの例であり,本研究が目指す建築物内外圧の影響考慮の重要性を示している。 建物室内圧の影響については,建物室内圧に関する数理モデルを構築した。数理モデルを用いて,複数の室内が連結されたモデルの内圧の計算をおこない,突風により風上に大きな開口が突然発生する場合の非定常な内圧の様子が再現された。
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