研究概要 |
本研究は,人工宅地造成地の盛土における地盤状況の分析に焦点を当てると共に,木造建物ならびに瓦屋根の地震被害の生起し始める条件の解明を目指して,瓦屋根を有する木造架構の動的耐震挙動を把握し,被害原因を究明して,耐震対策を施す資料を提供することを目的とする。得られた成果は,以下のようにまとめられる。 1.2001年の芸予地震によって,広島市内では丘陵の人工造成宅地の木造住宅に瓦屋根被害が多く集中して現れた。瓦屋根被害は盛土地盤上で多く発生しているのに対し,切土地盤では少ない傾向が認められた。このことを明らかにするためGISを用いて,造成前と造成後の縮尺1/2,500の地形図から標高の差を求め,切土・盛土を判別する手法を示した。切土・盛土の層厚が地盤の卓越振動数に関わり,地盤の卓越振動数の違いが家屋の瓦屋根被害に大きく影響を与えた可能性は高いと考える。 2.造成地について,造成前の時点の1/2,500地形図から現地形の格子点標高値データと同じ位置での数値標高データ(DEM ; Digital Elevation Model)を作成し,旧地形の地形形状を解析すると共に,現地形のDEMとの比較から地形変化を読み取り,造成による切盛り量を算定する方法を示し,具体的な造成地における切盛り量の詳細を明らかにした。さらに,造成前の地形解析から災害素因分析を行った。 3.木造在来軸組構法住宅について行ってきた研究調査において,築年数・壁量充足率・常時微動測定による固有振動数と軽微な地震被害に関連性のあることが推測された。建築年が新しいほど,壁量充足率・上部構造評点が高くなり,家屋の固有振動数は高くなること,さらに壁量充足率・上部構造評点が高いものは家屋の固有振動数も高い傾向を持つことを明らかにし,これらは,ばらつきが多いものの相関を持っていることを明らかにした。
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