研究概要 |
主要都市が形成されている堆積盆地における強地震動予測には,精度の良い地下構造(不規則基盤面形状)推定が必要である。本研究において,堆積盆地の2次元不規則基盤面形状を推定するため,長周期(1〜10秒)微動の水平/上下(H/V)スペクトル比の逆解析手法が提案された。本手法のメリットは,これまで一般的に利用されてきた微動記録を用いた地下構造推定において仮定されている平行成層構造モデルに基づかないため,盆地端部や伏在断層部のような基盤面形状の変化が急峻な領域においても精度良く推定できる可能性がある点にある。逆解析は,遺伝的アルゴリズムに基づいて行われている。一方,観測H/Vの再現手法として,有限要素モデルへ側方からレイリー波が入射する問題を扱っている。ターゲットとなるモデルを予め設定し,当該モデルにおける地表複数点のH/Vスペクトルを観測結果と見なした。深度の関数として堆積層の媒質パラメターを設定し,基盤深度に空間変動を与えることにより不規則基盤面形状と媒質不均質性を持つ盆地構造を表現した。探索される地下構造の高分解能化と探索の効率化を行うため,媒質のグリッドサイズの階層化(正方形の単位グリッドサイズは0.6,0.3,0.15kmの3階層)と水平方向へ盆地構造を分割するサブモデル化を逆解析に取り込んだ。これらの結果,効率的に精度(高分解能)良くターゲットとなる盆地基盤面形状を探索することができた。本提案手法を今後,実サイトへ適用するにあたり,1)3次元盆地構造の影響を数値実験に基づき検証すること,2)観測記録に含まれるノイズの影響を確認しておくことが必要と考えられる。
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