研究概要 |
金属間化合物が内包する脆さを,L1_2型金属間化合物に対しては繰り返し圧延-焼鈍プロセスを,またB2型金属間化合物に対しては2段階熱間圧延法を適用することで,汎用多結晶鋳塊から薄板あるいは箔材を作製することに成功した.これら加工および焼鈍材について組織制御の基礎となる集合組織,粒界性格分布(GBCD)等を調べるとともに,機械的性質を評価した.まず,L1_2(規則)材と比較材のfcc(不規則)材の再結晶組織におけるGBCDをSEM-EBSD法で調べた結果,焼鈍双晶(Σ3粒界)の形成頻度は規則(L1_2),不規則(fcc)構造に関係なく積層欠陥エネルギーの大小によって支配されるが,fcc材に比べてL1_2材では非整合双晶粒界が形成されにくく,高次のΣ粒界頻度が低い等の相違点も見い出し,粒界エネルギーにwrong-bondに基づく規則化エネルギーを考慮することで統一的かつ合理的に解釈できるとの提案を行った.また,Ni基L1_2材およびfcc材(純Ni)の冷延集合組織を調べた結果,L1_2材は合金型成分が強い純金属型集合組織を示すが,fcc材に比べて集積度が低いとの特徴を明らかにした.さらに,これらの集合組織は逆位相境界(APB)エネルギーあるいは積層欠陥エネルギーによってその拡張幅が依存する転位の交差すべりによって統一的に説明できることを明らかにした.一方,L1_2材のNi_3(Si,Ti),Ni_3Al,CO_3Ti冷間圧延箔の引張特性を調べた結果,3合金種とも高い引張強度を示すが,特にNi_3(Si,Ti)は適切な熱処理を行うことで,室温の引張強度が2GPaを超えるとともに,数%から十数%の伸びも示し,汎用のニッケル合金やステンレス鋼の強度特性を大きく超えることが明らかとなった.B2材についてはFeAl,NiAl,CoTi熱延材の集合組織やGBCD等の基本組織因子についての知見を得た.さらに,熱延-再結晶により組織調整したCoZr材は室温で20%の引張伸びを示すとともに,圧下率70%の冷間圧延も可能であることが確認された.
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