研究概要 |
近年、自然環境に対する保護意識の向上に伴い、セラミックアクチュエータ材料の非鉛化が強く求められている。本研究は高性能な非鉛系圧電材料の開発とそのアクチュエータへの応用を目的とする。 ペロブスカイト構造を有する(Na,K)NbO_3母材に、同じベロブスカイト構造を有するATiO_3(A=Ba, Sr, and Ca)を導入し、そのセラミック固溶体を開発した。放電プラズマ焼結法を用いることによって、試料を96%以上に緻密することに成功した。また、熱処理プロセスの最適条件を確立することにより、誘電特性・圧電特性を再現性良く達成した。試料の室温での結晶構造は、0【less than or equal】x【less than or equal】0.04で試料が正方晶で、x>0.05では試料が斜方晶であることがX線回折分析で判明した。圧電特性は少量のATiO_3添加によりエンハンスされ、正方晶/斜方晶の境界x=0.05近傍で試料の圧電特性が最も高いことが明らかになった。また、透過電子顕微鏡の観測により、試料のドメインサイズはATiO_3の導入により制御され、xの増大と共に細かくなることが分かった。 非鉛系圧電セラミックスの設計に不可欠である設計指針をまとめるために、(1-x)(Na,K)NbO_3-xATiO_3(A=Ba, Sr and Ca)試料の誘電率の温度依存性の結果から相図を作成した。立方晶-正方晶相転移温度T_<c1>は元素Aによって値が異なるが、正方晶-斜方晶相転移温度T_<c2>はほぼ元素Aによらずxのみに依存する。x=0.05では、全ての系のT_<c2>が室温付近にあり、正方/斜方の相境界(MPB)が形成される。圧電特性はMPB近傍で最大値を示す。リートベルトの解析結果、正方晶の空間群はP4mmで、斜方晶の空間群はAmm2であることが分かった。(Na,K)NbO_3-ATiO_3系はPZN-PTと同じMPBを持つことが明らかとなった。以上の結果から、ドーピングによりエンハンスされたニオブ系の圧電特性は鉛系のと類似し、MPBの形成によるものと確認した。 開発した0.95(Na,K)NbO_3-0.05BaTiO_3試料を用いて、バイモルフ型アクチュエータを作成した。その性能を評価した結果、交流駆動電圧の振幅と周波数への応答が確認された。また、直流電圧に対する変位は理論計算値と一致することも確認された。これにより、本研究で開発した試料がアクチュエータとして実用できることが実証された。
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