研究概要 |
陽極接合継手に逆電圧を印加した際に生じる継手欠陥の防止法の開発を,その原因となる接合界面へのアルカリイオンの集積の抑制の観点から試みた.アルカリイオンは逆電圧印加による継手欠陥発生の原因となるが,一方陽極接合のプロセスにおいても主要な役割を果たすため,単純にこれを取り除いたガラスは陽極接合できない.そこで,陽極接合においてアルカリイオンの代役をなす,ガラス中で高い移動度を持つイオンでアルカリイオンを置換してその効果を調べた.アルカリイオンは主にナトリウムを含む,Corning 7740ホウケイ酸ガラスのナトリウムを銀で置換したガラスは元のガラスと同等の陽極接合性を持ち,また得られた継手に逆電圧を加えても継手欠陥を生じないことを見出した.またCorning 7740と同じホウケイ酸ガラスであるが含まれるアルカリイオンが異なるCorning 7056ガラスについても銀イオンによるアルカリイオンの置換を行い,そのガラスで作製した継手と通常ガラスの継手に逆電圧を加えたときの継手強度の変化を観察し,アルカリイオンを銀で置換したガラスでは逆電圧による継手強度の低下が生じにくいことを見出した.銀置換を加えたガラスの継手に逆電圧を加えると,接合界面近傍に集積した銀イオンが特異な形状の銀析出物を形成する.この現象は直ちに継手欠陥の原因にはならないものの,継手の用途によっては不具合を引き起こす可能性があり,また逆にガラス中の微細金属構造作製に応用できる可能性もある.そこで,陽極接合・逆電圧印加の条件が析出物の形成・成長に与える影響を観察し,陽極接合時に接合界面近傍のガラス中に形成される陽イオン欠乏層中に,逆電圧印加時に生じる優先的な電流パスの形成頻度が,形成される析出物の大きさと数に大きく影響し,接合時間の短縮,逆電圧の増加,逆電圧印加温度の高温化が析出物の微細化と数密度の増加をもたらすことを見出した.
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