研究概要 |
Ni基単結晶合金は航空機エンジンのタービンブレードなど高温・高圧の過酷な環境で使用される部品の材料として利用されている.このような部品は極めて高価であるため,使用時に表面に欠陥が生じた場合でも,それを補修して再利用することがメンテナンスコストを削減する上で重要である.しかしながら,同材料における補修溶接時に,一部が多結晶化するため特性が著しく劣化することが問題となっており,補修技術の確立が急務となっている.そこで,本研究では単結晶状態を維持し得る補修プロセスの開発を目的として,半導体レーザを用いた肉盛補修技術の適用性について検討した.まず,単結晶化を達成し得る条件を明らかにするため,逆に溶融部内が多結晶化する条件,すなわち同部内におけるストレイクリスタルの成長条件について,逆問題熱伝導解析,デンドライトの成長方向に関する理論およびデンドライト先端の組成的過冷理論を用いて解析した.その結果,デンドライト先端での組成的過冷幅が大きい場合にストレイクリスタルが成長し易くなり,多結晶化することが判明した.さらに,レーザ照射時の出力や処理速度等の条件には適正範囲が存在することが明らかとなった.次に,前述のストレイクリスタルの成長に関する理論解析を,表面を肉盛補修する技術,すなわちレーザによる結晶制御クラッディング技術の確立に向けての研究に応用・発展させることを試みた.肉盛材をワイヤーの形でレーザ照射領域に挿入・供給して肉盛補修を実施した結果,比較的低いレーザ出力・ワイヤー供給量の条件において表面のごく一部を除く肉盛部の大部分が一方向デンドライト組織で構成され,わずかに異方向デンドライトが形成されるものの単結晶化が実現されることが明らかとなった.
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