研究概要 |
【緒言】本研究では、従来の液体の概念とは全く異なる新規物質"イオン性液体"を抽出溶媒とする、環境負荷の少ない溶媒抽出法の開発と希土類元素の抽出に汎用されている抽出剤をイオン性液体系に適用し、その抽出挙動を明らかにすることを目的とした。イオン性液体としてはヘキサフルオロリン酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、抽出剤としてはN-ベンゾイル-N-フェニルヒドロキシルアミン(BPHAと略)を用いることにした。 【結果・考察】1)BPHAのイオン性液体中での溶存状態と水相/イオン性液体相間の分配挙動 BPHAは非極性溶媒中に非解離型化学種(HL型)として溶解しているとき、無色透明な溶液が得られる。一方、極性溶媒中に解離型化学種(L^-型)として溶解しているとき淡黄色〜黄色を示す。BPHAをイオン性液体中に溶解する際、溶解条件によって溶液は淡黄色〜黄色を呈した。これらの結果から、BPHAはイオン性液体中ではHL型、L^-型が混在して溶解しているものと思われる。HL、L^-の分配定数は、K_<D,L>≪K_<D,HL>と推定され、解離型化学種の水相中で濃度は高くなり、水相中での金属イオンとの錯形成に対して有利である。このことが金属イオンの水相中での錯形成に寄与しているものと思われる。事実、BPHAをイオン性液体へ溶解する際、黄色が濃いほど希土類元素の抽出性は向上した。 2)BPHAによる希土類元素の抽出 1x10^<-4>mol dm^<-3>ランタノイド、1.0mol dm^<-3>酢酸緩衝溶液、0.04mol dm^<-3>酒石酸イオンを含む水相2cm^3と0.1mol dm^<-3>BPHAを含むイオン性液体2cm^3を1時間振り混ぜる。遠心分離器で分相後、水相のpHを測定する。ICPにより水相中のランタノイド濃度を測定する。比較としてCHCl_3を用いた場合についてもpH-抽出率曲線を作成した。抽出溶媒としてイオン性液体を用いると、CHCl_3で抽出したときより、低pH側で抽出することができ、抽出性の点で優れている。Hirayamaら^<1)>、Nakashimaら^<2)>も抽出剤としてTTA、CMPOを用いて同様の結果を得ている。 1)N.Hirayama, M.Deguchi, H.Kawasumi and T.Honjo, Talanta,65,255(2005). 2)K.Nakashima, F.Kubota, T.Maruyama, and M.Goto, Anal.Sci.,19,1097(2003).
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