研究概要 |
フィッシャー・トロプシュ(FT)合成は合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)から液体燃料を作る反応である。生成する液体燃料は,ほとんどが直鎖炭化水素であるため,セタン価は高いが,オクタン価が低いため,そのままではガソリンとして用いることはできない。この液体燃料からガソリンを製造するには,生成した燃料をゼオライト等の固体酸触媒を用いて,改質反応を行い,分枝炭化水素の含有量を高くする必要がある。一段階のFT合成反応でガソリン留分に相当する分枝炭化水素を製造するため,ゼオライトとFT触媒の混合触媒を用いる方法がある。この方法では,FT反応で生成する直鎖炭化水素はゼオライト上で分解・異性化反応を受け軽質化し,ガソリン留分に相当する分枝炭化水素を多く含む液体燃料が生成する。 超臨界相は液相と気相の両方の性質を持つため,原料と生成物の早い拡散速度と反応熱の除去が期待され,また高い溶解度を持つため,触媒を被毒する物質を溶解除去する能力が高い。上記のゼオライトとFT触媒の複合触媒を用いたFT合成では水が副成し,ゼオライトが失活する可能性があるが,超臨界相ではゼオライトから水が溶解除去され,活性が高くなると考えられる。 FT合成触媒としてCO/SiO_2触媒を用い,β-ゼオライトを用い,ゼオライト混合触媒を調製し,超臨界溶媒としてブタンを用いて,FT合成反応を行った。気相から超臨界相に変わるとCO転化率は62から72%へと向上した。メタン選択率は両相共に21%であったが,炭酸ガス選択率は超臨界相では8.3から3.3%へと低下した。これは超臨界相での拡散効率の向上によるものと考えられた。炭素数4から8の炭化水素の直鎖(n)と分枝炭化水素(iso)の比率(n/iso)は超臨界相では4.2から2.7と低くなり,超臨界相でのFT反応では効果的に異性化反応が起こり,ガソリン留分が合成できる事が分かった。
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