研究概要 |
内側を膜とした2重円筒タンクについて振動試験を行い,その動的特性をしらべた. 以下のような成果が得られた. 1.試験に対応する解析法について 境界要素法で液体をモデル化し,膜を有限要素法のシェル要素でモデル化し合体させて振動解析する方法は実用的な精度で実験と一致した.両側に液体がある弾性体について必ずしも2重吹き出しによる定式化を行わなくとも,1重吹き出しによる定式化で解析できることがわかった. 2.縦振動試験について 縦振動試験では明瞭なパラメトリック共振の応答となる.加振振動数と同じ振動数で共振させようと思ってもできなかった. 3.固有振動数について 内膜の剛性をかなり低くしても最低次の固有振動数にほとんど影響がないことを実験的に確認した.かなり低くというのは5cm四角程度のフィルムを縦方向にもつと重力で自立しないほど柔らかい膜(フィルム)である.よって,膜タンクシステムではシステムの振動系(POGO振動やスロッシング)としてほとんど剛性低下がないといえる. 4.減衰比について 剛な内壁であれば内側と外側(ドーナツ部)の系はまったく独立であるが,柔らかい膜の場合,相互に干渉しあって明瞭な共振現象が出にくくなる.この現象をスカラー量で表したのが減衰比ともいえる.膜の柔らかさにしたがって系の減衰比は2倍程度に増加することが実験的に確認された. 5.膜タンクシステムの将来性について 膜タンクを導入することでタンク1個分程度の軽量化が期待できる.その代償として推進系-構造振動系のシステム固有振動数の低下が懸念されたが,実験的にも数値計算でも実際にはほとんど低下しないことが確かめられた.また,減衰比は2倍程度に大きくなるので,振動/剛性/強度の観点から膜タンクシステムは有望であることが確認された.
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