研究概要 |
本研究では,透水性き裂のき裂内流体流と間隙水圧上昇に伴うAEの発生挙動解明のための岩石を用いたモデル実験,高透水性き裂のAEマルチプレット発生挙動解明のための実フィールドデータの解析を行い,双方の結果をもとにした高透水性き裂計測のために着目すべき物理量とパラメータの検討を行った.具体的には,人工き裂を作成した花崗岩試験片を用いて,間隙水圧上昇による岩石のせん断滑り実験を行い,AE発生挙動とせん断滑り,およびき裂内の圧力状態と流量との関係を明らかにした.一方,オーストラリアのクーパー盆地およびフランスのソルツでの水圧破砕に伴う誘発AEの解析を行い,注水圧や流量とAE発生挙動との関係を検討した.クーパー盆地では,AEマルチプレットの解析により,貯留層構造を明らかにした.一方,ソルツフィールドでは,マルチプレットを利用した地下き裂せん断滑りの臨界間隙水圧分布を推定し,貯留層内の圧力伝搬挙動とき裂進展メカニズムとの関係を検討した.水圧破砕による人工地熱貯留層は,既存き裂のうちせん断すべりを起こしやすいき裂が繰り返しせん断すべりを起こすと共に進展し,高透水性き裂を相互に連結することにより高透水き裂ゾーンが形成されるプロセスにより造成されることが分かった.また,貯留層内の間隙水圧は,注水圧がほとんど降下しない領域と,指数関数的に減衰していく領域が存在することが明らかとなった.以上の結果を踏まえて,AEマルチプレット・クラスタリング法による震源位置高精度標定に基づいた,貯留層内高透水性き裂システムの計測法を提案した.
|