研究概要 |
本プロジェクトでは下記の3つの成果を得た. 1.オキナワベニハゼは最大の個体が雄として複数の雌とつがいになる一夫多妻のハレム社会を持ち,双方向の性転換をする.野外では雌から雄への性転換は22例,雄から雌への性転換は3例観察された.前者では雄が何らかの理由で消失したときに最大の雌が雄になった.後者では単独雄がつがい相手が得られず,雌になり他のハレムに加入した.雌は他のハレムに移動すると,それまでいたハレム内の順位よりも上がる.このような移動はハレム内の順位を上げ,雄への性転換の機会を増やしていると思われる. 2.ベニハゼ属10種,イレズミハゼ属4種,シマイソハゼ属2種の生殖腺構造を組織学的に明らかにした.シマイソハゼ属を除く全ての種で雌雄にかかわらずオキナワベニハゼと同様,卵巣と精巣が同時に出現し,雄では精巣が発達し,雌では卵巣が成熟していた.シマイソハゼでは雄では精巣,雌では卵巣のみが見られた.この結果によりベニハゼ属,イレズミハゼ属では双方向性転換,シマイソハゼ属は雌雄異体であると考えられる. 3.オキナワベニハゼの生殖腺を免疫組織学的方法を用いてステロイド合成酵素であるP450コレステロール側鎖切断酵素(P450scc),3β-水酸基脱水素酵素(3β-HSD),芳香化酵素(Arom)について性転換過程で発現を明らかにした.その結果,卵巣部分の特に女性ホルモンの合成にかかわるAromが重要であることがわかった.このようなステロイド合成細胞の変動の因子を探るため,生殖腺におけるホルモン受容体であるAd4BP/SF-1遺伝子の動態をRT-PCRにより明らかにした.雌では卵巣部分で発現が多く,精巣部分で低い.雄ではこれと逆の結果となった.
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