研究概要 |
高等植物細胞壁を構成する主要な多糖の一つであるペクチンは双子葉植物の各器官に普遍的に分布している。ペクチンは三種類に分類されるが、その一つのラムノガラクツロナン-I(RG-I)にはガラクタン、アラビナンなどの側鎖が分枝結合している。本研究はRG-Iのガラクタン側鎖の合成に関わるβ-1,4-ガラクトース転移酵素(GalT)の酵素学的諸性質の解析、酵素タンパク質の精製、目的遺伝子のクローニングを目標とした。 1.酵素の調製法と活性測定:ダイズ実生から調製したミクロソーム画分(ゴルジ体膜)をGalTの酵素源に用いた。基質はUDP-[^<14>C]ガラクトースと非放射標識化合物を用い、液体シンチレーションカウンターならびにHPLCで転移産物に取り込まれたガラクトース量を測定して酵素活性を求めた。 2.酵素の性質:GalTの最適作用pHは6.5、最適作用温度は20-25℃である。酵素活性発現にはMn2+、界面活性剤が必要であり、重合度の高いβ-1,4-ガラクタン(分子量約60,000)が良好な受容体となる。 3.酵素の可溶化と精製:ダイズ実生のミクロソーム画分から界面活性剤(Triton X-100)を用いてGalTを可溶化した。イオン交換クロマトグラフィーとガラクトオリゴ糖を固定化した坦体を用いてアフィニティークロマトグラフィーで酵素精製を進めた。 4.β-1,4-ガラクタンの鎖長伸長反応:部分精製酵素酵素を用いて、UDP-Galを供与体、蛍光標識したβ-1,4-ガラクトヘプタオースを受容体として酵素反応を行い、天然糖鎖に匹敵する重合度35(β-1,4-Gal_<35>)までの多糖を生成することができた。
|