研究概要 |
1.未同定紅色細菌のカロテノイド同定 新規紅色細菌のカロテノイドを同定し、(2S)-スピリロキサンチン-2-オールを見出した。従来、紅色細菌からは立体異性を持つ水酸基は見つかってなく、また(2S)の立体配置はシアノバクテリアの(2'S)-ミクソール配糖体と同一である。,水酸化酵素の遺伝子はどちらからも見つかっていないが、カロテノイド合成の進化の上で共通性があるのか興味深い。 2.シアノバクテリア、アナベナPCC7120のβ-カロテン・ケト化酵素の機能解析 本株は2種類のβ-カロテン・ケト化酵素の遺伝子(crt0,crtw)をもっているので、遺伝子破壊株を作成し、生成するカロテノイドを分析して機能を検討した。Crtoはβ-カロテンをエキネノンにし、CrtWはミクソール・フコシドをケトミクソール・フコシドにした。従って、2つの酵素を2つの代謝経路で使い分けていることが判明した。類縁種のノストック・パンクテフォルメはcrOをもたずに、2種類のcrtWを同様に使い分けていると報告されているので、進化的観点から興味深い。 3.シアノバクテリア、グロエオバクターのカロテノイド同定と生合成遺伝子 本細菌はリボソームRNAの塩基配列から原始的シアノバクテリアとして知られている。カロテノイド配糖体を(2S,2'S)-オシロール・ジフコシドと同定した。フィトエン不飽和化酵素が紅色細菌と同じCrtIのみであることを見出した。今まで調べられたシアノバクテリアでは総て植物と同じCrtP, CrtQ, CrtHの3種類を必要とした。カロテノイド合成の進化の上で紅色細菌とシアノバクテリアを繋ぐ種である。 4.シアノバクテリアのカロテノイド同定と生合成経路の推定 アナベナ属とノストック属10種と糸状性シアノバクテリア9種について、総てのカロテノイドを同定した。ミクソール配糖体の糖については、精製・NMR測定が必要なため、同定には至っていない。19種の間でカロテノイド組成に多少の違いが見られるが、これは3-水酸化酵素CrtR、2-水酸化酵素CrtG-like、ケト化酵素Crtw/CrtOの有無、あるいは酵素の基質特異性などの性質の差異によると思われる。
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