研究概要 |
本研究課題では,申請者らがニワトリの末梢で同定したtruncationタイプの新規成長ホルモンアイソフォーム(sGH)が,成長ホルモン受容体に対してアゴニスト活性をもつのか,それともアンタゴニストとして働くのかを明らかにすることを目的とした。肝細胞に発現するインスリン様成長因子,および成長ホルモン受容体は,成長ホルモンによる発現調節を受けることが広く知られている。そこで,発現系プラスミド(pcDNA3)にsGH cDNAを組み込み,ヒト肝臓由来の株化培養細胞(Huh-7)でsGHを発現させて上記2遺伝子の発現に変化が見られるか否かを解析した。その結果,sGHタンパクを強制発現させた細胞では,成長ホルモン受容体とインスリン様成長因子のいずれにおいても発現の亢進が観察された。この結果は,sGHがアゴニストとして機能したことを示唆する。一方,sGHを強制発現させた株化培養細胞の訓化培養液を肝細胞株に投与したところ,同様な効果は観察されなかった。sGHは5つのエクソンからなる成長ホルモン遺伝子の第3イントロン内から転写開始されるmRNAにコードされており,N末端のシグナルペプチド領域を欠いている。本研究結果を勘案すると,sGHは,それを発現する細胞において,intracrine的に成長ホルモン受容体に作用するアゴニストである可能性が考えられる。ニワトリは外来成長ホルモンに対する抵抗性を示すことが古くから知られている。本研究成果は,その分子機構に示唆を与えるものであると考えられる。このsGHは様々な末梢組織に発現するが,GH遺伝子逆鎖DNAに由来する転写産物もそれらの組織に共発現することを見出した。その構造的特徴から,逆鎖転写産物はsGHの発現を制御する調節性RNAである可能性が考えられた。ニワトリの末梢組織には細胞増殖・分化を制御する新規のGH調節系が存在する可能性が示唆された。
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