研究概要 |
渦鞭毛藻の遊走細胞の細胞外被はアンフィエスマと呼ばれ,外側から順に,原形質膜,扁平で細胞周縁を取り囲むアンフィエスマ小胞,および微小管から構成される.有殻渦鞭毛藻では,アンフィエスマ小胞の内部に鎧板が存在し,その鎧板の形,数,配置のパターンが種によって決まっており,重要な分類形質の一つになっている.しかし,鎧板の配列パターンがどのように決定されるかは明らかにされていない。有殻渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecingulaの細胞外被は,原形質膜の内側に鎧板を含む完全に独立した個々のアンフィエスマ小胞が分布し,その直下に,数本の束になった微小管が配列する構造を示す.本研究では,S.hexapraecingulaの不動細胞を用いて,圧力処理による表層微小管と鎧板配列パターンへの影響を調べた. 圧力の大きさ,および処理時間に依存して微小管が破壊される細胞の割合が変化した。微小管に影響を及ぼさない圧力条件では,新たに形成される遊走細胞の鎧板配列パターンは変化しなかった.しかし,微小管が破壊される圧力条件では,新たに形成される遊走細胞の鎧板配列パターンが顕著に変化した.その変異は,プレートの増加,減少,変形,融合などが複雑に組み合わさった多様なパターンを示した.また,微小管が破壊される細胞の割合が増加すると,鎧板配列パターンが顕著に変異する細胞の割合も増加した.以上のことから,表層微小管は鎧板の形,数,配列パターンの調節に必須であることが明らかとなり,また,ecdysis後の不動細胞内で新たに形成される個々のアンフィエスマ小胞の発達の領域,および,お互いに融合する位置の決定に表層微小管が関与することが示唆された.
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