研究概要 |
魚類(メダカ)をモデルとして、プロゲステロン系ステロイドホルモン(プロゲスチン)の細胞膜受容体の情報伝達機構の解析を目指した。プロゲスチン細胞膜受容体は、G蛋白質結合型受容体(GPCR)ファミリーに属すると考えられており、α、β、γの3種が報告されている。本課題では、メダカ卵巣より、これらのホモログ遺伝子のホルモン結合活性の確認とその作用の解析を予定した。新たにolGPCRβをクローニングし、これまに得ていた2種と合わせて、3種の受容体遺伝子候補(olGPCRα;AB111911,olGPCRβ;AB239928,olGPCRγ;AB111912)を得た。 これらの部分ペプチド配列を基に抗ペプチド抗体の作出を複数回試みたが、抗原ペプチドに対する抗体価は上昇しても卵巣蛋白質抽出物中に受容体を検出できる良好な抗体は未だに得られていない。Northern blot解析により、α型は脳、筋、頭腎、卵巣、精巣で、γ型は卵巣と精巣で発現していること、β型の発現はどの組織でも見られないことが判った。アルファ型の卵巣での発現は卵母細胞に限られ、卵黄形成開始前のものでも既に発現が見られた。 GPCRの解析と平行して、メダカが持つ他のプロゲスチン受容体・結合蛋白質遺伝子のクローニングを行った。ヒトのプロゲステロン結合蛋白質Hpr6.6とDg6のメダカホモログをクローニングした(OlPGRMC1;AB240046,OlPGRMC2;AB23991)。メダカ性ホルモン結合グロブリン遺伝子をTIGR databaseよりin silicoクローニングした(medaka SHBG ; TIGR TC41349)。また、in houseのメダカゲノムライブラリ中よりプロゲスチン核受容体と予想される配列を得た(scaffold 5161)。 これにより、メダカには、少なくとも4群7種のプロゲスチン受容体・結合蛋白質が存在することがわかった。今後、これらの発現と作用を個体レベルで解析する予定である。
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