研究概要 |
細胞質タンパクの多くのものは機能不明のシステイン残基をもつ。脂肪酸結合タンパク(FABP)をモデルとして細胞質のジスルフィド結合の機能を明らかにするため、一次構造上異なる位置にシステイン残基をもつラット,ニワトリ,タテガミトカゲ,ウシガエル,ゼブラフィッシュの肝FABPの精製標品,組換えタンパクについて検討した。グルタチオン混合ジスルフィド形成では,本来の生物活性には顕著な変化はみられないが,いずれもタンパク質分解酵素に対する感受性が著しく高まることを明らかにした。さらにセンチュウ(C.elegans)における9種類のFABPホモログ(FABP-1〜FABP-9)について組換えタンパク質を調製を試み,すべての発現精製が可能になった。これらは1つあるいは複数のシステイン残基をもつものと,全くもたないものがあり,ジスルフィド形成の機能を解析するには,好適な材料である。ジアミドをもちいた試験管内反応で,定量的に混合ジスルフィド,および分子内SS結合(FABP-9)形成の条件を確立した。このうちFABP-5について詳細に実験をおこない,グルタチオン混合ジスルフィド形成により,急速にタンパク質分解をうけることを見いだした。以上の結果は,混合ジスルフィドがタンパク質の安定性にかかわっており,酸化ストレスを受けたタンパク質の分解の標識という新しい機能をもつ可能性が普遍的であることを示している。
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