研究課題
基盤研究(C)
タンパク質が膜を越える反応は、全ての生物で見られる普遍的な生命現象であり、そのメカニズムの解明は、細胞生物学の最も基本的かつ重要な研究課題の1つといえる。タンパク質膜透過反応は、膜透過「チャネル」を介して起こる。進化的に保存された膜内在性タンパク質からなるSecYE/Sec61複合体が中心的な役割を果たしているが、その実体は不明である。本研究は、膜透過駆動モーターSecAとSecYEとの複合体の分子レベルの高次構造を明らかにし、タンパク質の膜透過の機構を分子レベルで明らかにすることを最終的な目的として、高度好熱菌Thermus thermophilus HB8由来のタンパク質を材料にX線結晶構造解析を進めた。昨年までにTSecA, TSecYEの発現・精製系は構築済みであり、TsecAについては、2.8Å分解能で立体構造を明らかにしている。TsecYEも6Å分解能のデータセットは得られていたものの、分子レベルの構造決定には、更なる結晶の質の改良が必要であった。そこで、今年は、TSecYEに対する特異的なモノクローナル抗体を作製し、そのFabフラグメントとTSecYE複合体共結晶の構造解析を試みた。TSecYEと安定に複合体を形成できるモノクローナル抗体株の樹立・Fab化にも成功した。調製したFabがTSecYEと安定な複合体を形成する事は、ゲルろ過等の実験から確認した。このTSecYE-Fab複合体を用いく結晶化を進め、既にとある条件で共結晶を得ている。現在、結晶化条件の最適化を進めている。上記のプロジェクトと平行して、膜透過装置と複合体を形成し、機能制御を行っているSecDFタンパク質の精製結晶化も進め、TSecDFの3次元結晶を得て、予備的X線データの取得も終了している。現在は、モデルの精密化を進めている、近々世界に先駆けて立体構造が報告できるものと期待している。
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