研究概要 |
生体内で不要または有害となった細胞にはアポトーシスが誘導され,このような細胞は食細胞による貪食により生体から排除され,個体の恒常性が保たれている。本研究では,以下の課題について成果を得た。 SR-BIを介したセルトリ細胞による精子形成貪食反応機構と意義 アポトーシス細胞を認識したセルトリ細胞内では,MAPキナーゼp38およびERKI/IIを介する情報経路がSR-BIを介して活性化した。両経路の同時抑制により,セルトリ細胞のアポトーシス細胞およびホスファチジルセリン取込のどちらも顕著に抑制された。これより,SR-BIは細胞内情報伝達を導く貪食受容体であると示され,SR-BIを介する貪食反応にはMAPキナーゼ活性が必要と考えられた。 インフルエンザウイルス感染細胞貪食の病態生理学的役割 マウスに順化させたヒトA型インフルエンザウイルスをマウスに感染させると,肺組織内で感染アポトーシス細胞が食細胞に貪食されるとわかった。貪食阻害剤共存により生存率低下と炎症増加がおこると判明した。細胞貪食は,インフルエンザウイルスに対する防御に機構であることが,初めてin vivo解析で示された。 貪食胞とリソソームとの融合調節機構 マクロファージ内に取り込まれた標的を含む貪食胞はリソソームと融合し,標的はリソソーム内酵素群により分解される。本研究では,貪食胞とリソソーム融合を調節する細胞内情報伝達経路を探った。その結果,貪食時にMAPキナーゼ経路のp38とERKI/IIが活性化され,両者により貪食胞のリソソームへの融合が抑制されるとわかった。
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