研究課題
基盤研究(C)
TORはヒトから酵母まで広く存在するタンパク質キナーゼであり、栄養状況に応じて細胞の増殖と成長を制御する新たなシグナル経路の中心を担う。最近、腫瘍抑制遺伝子の産物(TSC1、TSC2)がTORを制御することがわかり、癌治療の視点からも注目を集めている。分裂酵母は遺伝学が使える上に、TORの上流がヒトと似ているので、TOR経路の制御機構を研究する良いモデル生物である。そこで、分裂酵母をモデル材料に用い遺伝学的手段によりTORシグナル経路の研究を行った。分裂酵母にはTOR1とTOR2があり、TOR1は生育に非必須なのに対し、TOR2は必須である。しかし、TOR2の詳細な機能はまだよく分かっていなかった。そこで、TOR2の温度感受性変異株を取得し、解析した。キナーゼドメインを含むC末領域をmutagenic PCRによって変異させ、TOR2の温度感受性変異株を得た。この株は、許容温度(26℃)では正常に増殖したが、制限温度(36℃)では増殖しなかった。この細胞は丸くて小さく、G1のものが大半であった。36℃ではisp6^+やste11^+など、窒素源飢餓で発現誘導される遺伝子の発現が誘起され、窒素源飢餓特異的に起きる性分化も見られた。これらの性質は窒素源飢餓で表れる特徴と一致し、このことは、TOR2が増殖に必要であり、TOR2の不活性下が窒素源飢餓応答を引き起こすことを示唆した。TOR1破壊株との二重変異株では、許容温度がさらに低下し、このことは、TOR1とTOR2がともに生育に正の働きをすることを示唆した。一方、二重変異株は非許容温度でG1にアレストせず、G2にとどまった。このことは、窒素源飢餓に対する応答には、TOR1が必要であることを意味し、TOR2の働きとは異なることを示唆した。さらに、TOR1破壊株のストレス感受性はTSC1破壊やRHB1の過剰発現により抑圧された。また、免疫沈殿法により、RHB1とTOR2との物理的相互作用も示された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Genes to Cells 11
ページ: 1367-1379
The EMBO Journal 25
ページ: 3832-3842
Current Genetics 49
ページ: 403-413
The EMBO Journal l25
Current Genetics 印刷中