研究概要 |
糖輸送体の分子機構の解析を目標にして、遺伝子操作法が確立しており、全ゲノム配列が明らかな酵母Saccharomyces cerevisiaeの糖輸送体を用いて基質認識部位の解析を行った。Major facilitator superfamily(MFS)に属する酵母の高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1は、各々12個の膜貫通領域(TM)を持ち、そのうちの70%のアミノ酸が同一である。Hxt2の12個すべてのTMを対応するHxt1のTMとランダムに置換しキメラ糖輸送体を作成し、糖濃度を制限した寒天培地上で高親和性糖輸送活性を持つクローンを選択し、解析した。Hxt2の4個のTM(TM1,5,7,8)が高親和性糖輸送に必須であることがわかった。このTM中では20個のアミノ酸がHxt1,Hxt2間で異なっている。(1)各TMにおいて、Hxt2のこれらのアミノ酸を、対応するHxt1のアミノ酸とランダムに置換した変異体を作成し、その糖輸送活性から、Hxt2のTM5のLeu-201が高親和性糖輸送に必須であり、他の5個のアミノ酸が必須でないことが明らかになった(J.Biol.Chem.279,30274-30278,2004)。(2)残り14個のアミノ酸を同時にHxt1の対応するアミノ酸とランダム置換し活性の解析から、Hxt2のAsn-331(TM7)を含む4個のアミノ酸が高親和性糖輸送に必須であり、他の5個のアミノ酸が必須でないことが明らかになった。(3)残りのアミノ酸のすべての組み合わせの変異体2^5=32個を作成し、その糖輸送活性の解析から、さらに3個のアミノ酸が同定された(J.Biol.Chem.281,2006,in press)。 MFSですでに結晶構造のわかっているバクテリアのGlpTを鋳型として、3次元モデルを構築すると、Asn-331が糖輸送のpathwayで糖と直接に関与しており、他の7個のアミノ酸は糖輸送体の構造を保つ補助的役割をしていることが示唆された。
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