研究概要 |
dGC(GAA)GCおよびループ部の3塩基を置換したDNAミニヘアピン分子について、マルチカノニカル分子動力学法およびLocal Enhanced Sampling(LES)による網羅的な構造サンプリングを行い、核酸ヘアピン構造の安定性の配列依存性を解析した。マルチカノニカル分子動力学法では、GAAループについてアンフォールド状態からフォールド状態への遷移がみられたので、ヘアピン構造形成と崩壊の過程を詳細に解析した。その結果、12塩基から成るRNA4ループヘアピン分子について天然構造から通常の分子動力学シミュレーションによって崩壊を解析したSorinらの研究結果では、ヘアピンの形成・崩壊のパスウェイとして、zipping/unzippingとcompaction/expansionの2種類が提案されているが、dGC(GAA)GCの場合は、compactionによるヘアピンの形成であると結論付けた。また、1,2,6,7番目の塩基対を保持したうえで、ループ部に対してLESによるサンプリングを行った。対象は、安定なdGC(GNA)GC(N=A, G, T, Cの4通り)および不安定なdGC(GAG)GC, dGC(GAC)GCとし、約10nsのシミュレーションを各配列につき数回行った。その結果、安定なdGC(GNA)GCについて天然構造と類似の構造が得られた。また不安定なGACについては、一定の構造に収束しなかった。GAAのrefolding過程を詳細に解析したところ、N=A, G, T, Cによらず、5番目→3番目→4番目の順に塩基がステムの上にスタックする共通のパスウェイが観察され、塩基配列の違いによるヘアピン構造のとりやすさの違いのメカニズムの一端を明らかにすることができた。以上により、計算機シミュレーションにより核酸ヘアピン構造の安定性の配列依存性を解析する基盤を確立した。
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