研究概要 |
AAA-ATPaseは、細菌からヒトまで広く保存されているタンパク質ファミリーであり、ATP加水分解エネルギーを利用して、タンパク質のunfoldや複合体の解離を行う。その分子中央部分に、AAAドメインを一つ有するI型と2つ有するII型に大別される。また、19SプロテアソームのようにN末端部分にドメインを持たないもの、PEX1のように更に長い(〜500残基)配列を有するものなどがあり,ドメイン解剖学的研究が必須であった. そこで,まずタンパク質ドメイン発現系を効率よく作成する方法論(PRESAT-vector法)を確立した。それを用いてII型酵素ペルオキシソーム因子PEX1のN末端から新規のドメインを発見し,結晶構造解析に成功した。驚くべきことに、14%という低い配列相同性ながらその構造は他の膜融合装置のそれに酷似していた。また,エンドソームに局在するI型酵素Vps4と,類縁の微小管切断因子katanin p60のN末端から,ドメインを単離し立体構造決定を行った.前者のドメイン(MIT)の分子表面には,標的となるESCRT-III複合体の結合部位と考えられる特徴的な溝が存在していた.後者はドメイン直後にコイルドコイル領域が存在するため,解析可能な試料を得るにはコイルドコイル配列の改変技術が不可欠であった. さらにN末端ドメインをもたないプロテアソームについては,基質認識を行うシャトル因子と呼ばれる別のタンパク質が介在しているが,そのうちの一つDsk2についてUBAドメインとユビキチン複合体の構造決定を行った.また19Sプロテアソームによる基質認識機構について、K48linkポリUb鎖のみを基質とし、K63linkは基質としないという特異性を解明するため、両者の動的性質の違いをNMRにより比較した。 解析を行った5例のうち2例に,脂質結合活性があることを見出した.
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