研究課題
基盤研究(C)
本研究では、核膜内膜蛋白Man1を構造蛋白としてではなく、シグナルを制御する機能蛋白として捉える新しい視点に立脚して、Man1のin vivoにおける機能を解析した。平成16年度は、Man1遺伝子が「トラップ」されたES細胞から変異マウスを樹立し、LacZ染色により、発生過程におけるMan1の発現パターンを詳細に調べた。また、ヘテロ変異胚は正常に発達するのに対し、ホモ変異胚は胎生10.5日前後に致死となること、その原因として、原始血管網からリモデリングによって成熟した血管ができる、血管新生過程の異常が考えられることを報告した。平成17年度は、ホモ変異胚において血管新生異常が起こるメカニズムについて詳しい解析を行った。Man1はTGF-β経路の制御因子であるので、Man1欠損胚の血管新生の異常の根底に、TGF-β経路の制御の異常があるかどうかをまず検討した。その結果、Man1欠損胚では、TGFβ1-Smad2/3経路が異常に亢進しているために、その下流のフィブロネクチン(FN)の産生が上昇し、血管周囲を含む胚全体に異所性に沈着ていることを見出した。このFNの沈着により、Man1欠損胚では血管内皮細胞の移動が阻害され、血管のリモデリングの異常が起こったと考えられた。本研究により、「TGFβ1-Smad2/3経路を介する細胞外マトリックスの産生を制御することによって、血管のリモデリングを調節する」という、Man1の新しい作用機序を明らかにすることができた。私たちは現在、Man1は細胞膜上の受容体から核に届いたTGF-βシグナルを、核膜上でさらに微調整する(fine-tune)する装置ではないかと考えている。Man1によるTGF-βシグナル経路の制御のメカニズムの解明は、TGF-βシグナル経路が担う多彩な生理機能を考える上で非常に重要な問題の一つである。
すべて 2005
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Int. J. Dev. Biol 49
ページ: 939-951
Int.J.Dev.Biol. 49
Int.J.Dev.Biol 49