研究概要 |
本研究では、Fgf10遺伝子のシスエレメントを解析し、器官形成におけるFGF10シグナル-転写調節因子ネットワークを明らかにすることを目的とした。本年度は、これまで明らかにしてきたFgf10上流6.6kbゲノム配列のさらなる解析と今後のシス解析に向けてのFgf10の機能解析を行った。まずFGF10の眼瞼形成における役割を調べた。Fgf10は眼瞼形成の最も初期である胎生11日にすでに将来の眼瞼の間葉に発現し、少なくとも15日胚までの眼瞼間葉に発現し,一方,FGF10の主要なレセプターであるFGFR2bは眼瞼上皮に発現していた。Fgf10ノックアウト(KO)マウスでは、増殖している眼瞼溝上皮細胞の数が有意に少なく、立方上皮への形態変化が遅れ平坦な形態のままであった。その後、KOマウスでは先端上皮が突出するものの、細胞が移動せずに眼瞼が閉鎖しない。また、KOマウスの眼瞼先端上皮に線維状アクチン(F-アクチン)が集積していないことがわかった。さらに、Activin betaBおよびTgf alphaの眼瞼先端上皮における発現が著しく減じていること、これらの遺伝子の発現やF-アクチンの集積がFGF10蛋白質によりレスキューされることを見出した。以上の結果から、FGF10シグナルはマウス眼瞼形成において上皮細胞の増殖と移動の2つの役割を担うこと、眼瞼先端上皮細胞の移動においてActivinおよびTGF alphaシグナルと関連があることが明らかになった。また,Fgf10の歯形成における役割について,FGF10シグナルが中断されることで歯冠部から歯根部の形成へと移ることを明らかにした。Fgf10ゲノム配列のin silico転写因子結合部位の解析を行い,レチノイン酸受容体など核内レセプターの結合候補部位が存在する知見を得た。
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