研究課題
基盤研究(C)
日本本土と台湾との間の約1300kmにおよぶ弧状の島嶼群である南西諸島における集団史を明らかにするため、南西諸島の中心に位置する沖縄本島の宜野湾市奥間の近世墓に埋葬されていた人骨68体(男19体・女17体・性別不明(幼小児を含む)32体)を資料として、歯の形態学的特徴を明らかにした。歯冠と歯根の非計測的形質25項目の出現頻度について、南西諸島の集団を含む日本列島の諸集団、および東アジアの諸集団と比較し、集団間の類縁性について検討した。本研究の沖縄本島近世集団と他の南西諸島現代集団は、東アジア諸集団の中で北東アジア型のSinodontyと東南アジア型のSundadontyの間の中間的な特徴を持っていた。また日本列島諸集団の中では、縄文時代人のような在来系集団よりも、北部九州弥生人や本土現代人のような渡来系集団に圧倒的に近いことが明らかになった。多次元尺度法によって得られた在来系と渡来系を明瞭に分離可能な軸についてみると、本研究の沖縄本島近世集団は、種子島、沖縄本島、宮古島および石垣島などの南西諸島の現代集団よりもやや在来系集団に近く位置していた。沖縄本島近世集団が在来系よりも渡来系集団に近い形質を持っていることは、沖縄本島では近世までにはすでに大きな一度以上のSinodonty化の波が押し寄せてきていたことを示しており、沖縄本島への渡来系遺伝子の浸透が相当深く浸透していたものと思われる。さらに、南西諸島の現代人集団よりやや在来系的特徴を多く持っていたことから、近世から現代にかけても渡来系遺伝子の浸透はわずかに続いていた可能性が示唆された。南西諸島の集団史を考える場合、古墳時代以降に北部九州から南部九州を経て、南西諸島に入り、南下していった渡来系遺伝子の流れが想定される。
すべて 2007
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Anthropological Science priot ISSN 0918-7960 publishedon line
10025705154
Anthropological Science published online November(pringt ISSBN)
ページ: 918-796