研究概要 |
サツマイモの塊根より2種類のサイクリンD3のcDNAが得られ,CycD3;1及びCycD3;2と名付けた.CycD3;1及び2にはいずれもLxCxEモチーフとサイクリンボックスが存在したが,アミノ酸配列の相同性は49%であった.CycD3;1及び2遺伝子はいずれも塊根形成が開始される時期に発現レベルが高まった.CycD3;1遺伝子はその後も高い発現レベルを維持したが,CycD3;2遺伝子の発現レベルは低下した.デンプン合成における鍵酵素であるADPグルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)については塊根形成とともに遺伝子の発現レベルが高まった.次に,CycD3;1,2及びAGPase遺伝子の発現制御について検討した.スクロースの濃度を50mMずつ150mMまで増加させたところ,CycD3;1遺伝子の発現レベルは100mMで最も高くなり,150mMまでその発現レベルを維持した.CycD3;2遺伝子の発現レベルも100mMで最も高まったが,150mMになると低下した.AGPase遺伝子の発現レベルはスクロース濃度が高まるにつれて高まった.また,スクロースにサイトカイニンを加えることによりCycD3;1及び2遺伝子の発現レベルは著しく高まったが,AGPase遺伝子の発現レベルは低下した.スクロースの存在下においてCycD3;1及び2遺伝子の発現に及ぼすABAの影響は小さかったが,AGPase遺伝子の発現レベルはABAにより低下した.以上の結果より,CycD3;1,2及びAGPase遺伝子の発現はスクロース,サイトカイニン及びABAによって制御されていることが明らかとなり,これを介して塊根形成における細胞の分裂と分化が制御されていることが示唆された.
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