研究概要 |
花モモにおける菊咲き性および花色を制御する遺伝子座の数やその作用などを明らかにするため,‘寿星桃'および‘菊桃'から得た集団を用いて,SSRマーカーを用いた連鎖地図を作成し,次いで菊咲き性および花色のQTL解析を行った. 1.連鎖地図の作成 Prunus属由来のSSRマーカー164種類を供試した結果,55種類のSSRマーカーからなる全長290.5CMの連鎖地図が作成された.マーカー間の距離は20CM以下で,モモゲノムの約60%をカバーしていた. 2.菊咲き性の遺伝とQTL解析 菊咲きと八重咲きとの分離比から,菊咲き性の遺伝は,二遺伝子もしくはそれ以上で支配されていると考えられた.しかし,半菊咲きタイプは連続的な中間タイプの形態を示すことから,菊咲き性には複数の主動遺伝子と微動遺伝子が関与していることが示唆された.そこで,QTL解析を行った結果,菊咲き性には第6連鎖群上の2つの領域に有意なQTLが検出された.これらのLOD値と寄与率は非常に高く,2つのQTLが主に菊咲き性を支配していることが明らかとなった.また,2つのQTL座と樹高(Dwarf)の遺伝子座との距離は非常に近く,強く連鎖していた.一方,菊咲き性の個体は幼葉,果実,核などの先端部が尖形になる特徴がみられたことから,これらの形質データを用いてQTL解析を行った.その結果,菊咲き性のQTL領域とほぼ同じ領域にQTLが検出された.従って,菊咲き性(花弁の形)を制御する因子が、葉や果実の形を制御する因子と同じである可能性が示唆された. 4.花色の遺伝とQTL解析 花色は赤色,ピンク色,白色に分離し,その比から二遺伝子もしくはそれ以上で支配されていると考えられた.QTL解析の結果,第1連鎖群上に2つ,第3連鎖群上部に1つの有意なQTLが検出された.第3連鎖群上部のQTLが花色の有色/無色を決定するchromogen遺伝子であり,第1連鎖群上のQTLが色の濃淡と色相を変化させるactivator遺伝子またはアントシアニジンを配糖体にする遺伝子と考えられた.
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