研究概要 |
ピンク色花系スプレーギクは,高温期の作期で秋ギク型品種の到花日数が増加した.花序径は高温期に減少し,舌状花数は増加傾向を示した.‘チャトー'を除くピンク色花系品種では涼温期の作期でL*値,b*値が小さく,a*値,c*値が著しく大きく,高温期では逆の傾向を示した.ピンク色花系品種ではCy3-6''-MMGおよびCy3-3''と6''-DMGが主要アントシアニンであり,これら2つの主要花色素の増減によってピンク色花の花色が決定されることが示された. アプリコット色花系品種では高温時に黄色味が増し,低温時に赤味が増した.これは,高温下で花弁中の主要アントシアニン量が減少するが,カロテノイド量はあまり影響を受けないためであった.一方,覆輪花品種では温度により赤色部位の濃淡または覆輪割合の変動が見られた.これらの原因も2つの主要アントシアニン量の増減によるものであった. 高温条件下では夏秋ギク型品種においても秋ギク型品種と同様,小花分化の開始は遅れたが,分化完了時期には温度による差はなかった.短日処理開始15日目までの高温は,開花の早晩にほとんど影響を及ぼさなかった.また,破蕾する花序の大きさは品種固有であり,その大きさに達するまでの時間が20℃下に比べて30℃下で長くなった.以上のことから,発蕾以降の高温がキクの花序の発達を抑制し,破蕾に到達する時期が延長することにより,結果として開花遅延が生じた. 到花日数は積算温度が高い処理区ほど増加し,筒状花数の増減は積算温度の高低ではなく,短日処理開始15-30日目の温度によって大きく変化した.さらに,小花数に及ぼす温度の影響について検討し,短日処理開始後10-20日に30℃下に置かれると小花数が増加した.以上のことから,高温下での小花数の増加は,小花分化期という特定の期間に高温に遭遇することで生じ,開花遅延とは独立した現象であった.
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