研究概要 |
本研究は、研究代表者がこれまでに育成に成功した野生種Solanum anguivi、S.kurzii及びS.violaceumの各細胞質をもつ3種類のナス異質細胞質系統(細胞質雄性不稔系統)の特性のナス育種への利用の可能性を探ることを目的とした。補助金が交付された平成16年度及び17年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.花粉稔性及び花器の様相について調査した結果、3種類のナス異質細胞質系統がいずれも安定した雄性不稔性を示したとともに、いずれの系統も比較的高い種子稔性を示した。 2.露地ビニルハウス内で生育、収量性及び耐寒性を比較した結果、3種類のナス異質細胞質系統とそれらの親系統との間でいずれについても顕著な差が認められなかった。 3.各器官の形態を調査した結果、葯などの雄性器官を除いて3種類の異質細胞質系統はいずれも親品種との差異が認められなかった。 4.ミトコンドリアDNAのPCR-RFLP分析の結果,srRNA V7領域ではScrF Iを用いた分析で,また,nad7 3-4領域ではAlu Iを用いた分析でそれぞれ多型が認められたことから、細胞質識別のためにこれらの領域のPCR-RFLP分析が有効であることを明らかにした。 5.Inter-simple sequence repeat(ISSR)分析の結果,100種類のプライマーのうち、34種類を用いた分析によってISSRマーカーのバンドを計552本得ることができたことから、ISSRマーカーがナス及びナス属野生種の遺伝的マーカーとして有効であることを明らかにした。 6.これまでに育成した3種類に加えて、新たにS.virginianumの細胞質をもつナス異質細胞質系統が雄性不稔性を示す可能性があることを明らかにした。
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