研究概要 |
本研究課題では,ムギ類赤かび病菌Fusarium graminearum(完全世代:Gibberella zeae)を始めとする一連のマイコトシキシン産生フザリウム属菌の核型・染色体について系統進化の観点から分子細胞遺伝学的解析を行った。得られた成果の概要は次の通りである。 1.ゲノムプロジェクトで使用された菌株(PH-1,00-676)の染色体数(n=4)と各染色体の形態的特徴を調べて細胞学的核型を決定し,顕微鏡下の染色体と遺伝子連鎖群との対応関係を明らかにした。 2.日本を含め12力国産の21種35菌株を収集して細胞学的及び電気泳動的核型を調べた。その結果,種内では染色体長多型等の変異はあるが染色体数は一定であること,種レベルでは固有の染色体数を示すこと,21種がn=4(F.graminearum等9種),n=5(F.equiseti, F.longipes),n=8(F.avenaceuml等4種),n=12(F.fujikuroi等6種)にグループ分けできることを明らかにした。 3.核型を解析した9種19菌株についてTEF-1αとhistone H3遺伝子の塩基配列を決定して分子系統樹を作成し,系統と染色体数との関係を調べた.その結果,マイコトキシン産生フザリム属菌ではn【less than or equal】12→n=8とn【less than or equal】12→n=5→n=4という2つの独立した核型進化が起こり現在の核型が成立したことがわかった。また,染色体の形態観察結果と併せて炉4は祖先種から染色体融合によって生じた可能性が高いことを見い出した。 4.染色体融合によるn=4の成立を証明するために染色体ペインティングFISHを行い,F.proliferatumlの約0.7Mb染色体がF.graminearumの第4染色体端部領域に対応することを見いだした。
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