研究概要 |
1.シロイヌナズナ翻訳開始因子eIF (iso)4E及びカブモザイクウイルスゲノム結合蛋白質VPgの発現精製、結晶の調製 eIF (iso)4EおよびVPgの大量発現系の構築および精製に成功し、研究分担者大阪薬科大学友尾幸司講師と共に結晶化条件について現在も検討を続けている。また、研究グループが知見を持っているヒトeIF4Eの結晶構造(Tomoo, K. et al., Biochim Biophys Acta, 2005)を利用した計算機によるeIF (iso)4Eの立体構造モデルを作製した。 2.VPgとeIF (iso)4Eとの相互作用の分析 結合分析の結果、VPgが選択的にeIF (iso)4Eと直接結合し、更にeIF (iso)4Gとの三者複合体を形成する結果を得た。この結果は、ウイルスゲノムに共有結合したVPgが、宿主のeIF (iso)4F複合体に結合してリボソームをウイルスゲノムRNAへ誘導して、ウイルスゲノムの蛋白質への翻訳に直接関与している可能性やeIF (iso)4Gと微細管蛋白質との結合を介したウイルスゲノムRNAの細胞間移行への関与の可能性を示唆する。更に、直接キャップ構造を認識するTrp残基をほかのアミノ酸に置換したeIF (iso)4E変異体が、キャップ構造にもVPgに対しても同様に結合能を失った事から、結合領域の重複している事も示唆された。また、SPR法を用いた生化学的な速度論の検討により、このeIF (iso)4EとVPgとの相互作用が、eIF (iso)4Eと宿主の植物細胞のmRNAとの結合よりも高い親和性である結果を得た(Miyoshi. H. et al.,Biocimie,2006)。これはウイルス感染初期段階のウイルスゲノムの翻訳が宿主のmRNAよりも優先的に開始される理由を説明できるものである。また、VPgのeIF (iso)4Eへの結合領域を決定した(第26回日本分子生物学会年会で報告)。現在、その結合領域に変異を加えたVPg改変TuMVのcDNAクローンのシロイヌナズナへの感染性試験を行って、その病原性の変化を調査検討している(第20回国際生化学・分子生物学会議で報告予定)。更にeIF (iso)4EとVPgとの相互作用については、昨年度成果を報告(CSHL Meeting Translational Control 2004)した際に、共同研究を開始したニューヨーク市立大学ゴス教授と共同で、蛍光滴定法により詳細に速度論の検討を行っている(ASBMB Annual Meeting 2006で報告)。
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