研究概要 |
熱帯果樹のマンゴー,パッションフルーツ,落葉果樹のブルーベリーの着花促進と安定結実のために,日本固有の野生種であるニホンミツバチを花粉媒介昆虫として実用化することを目的とした.訪花性にも優れた系統を選抜するために,女王蜂の人工授精を継続しながら蜂群の確保を実施した. 1.マンゴー: ホホジロオビキンバエは花穂に長時間留まっているのに対して,ニホンミツバチの活動は活発であった.晴天時での訪花はニホンミツバチがセイヨウミツバチの約2倍量であった.花房上における採餌行動時間はセイヨウミツバチが長く次いでニホンミツバチ,クロマルハナバチの順であり,ニホンミツバチは頻繁に訪花と移動を繰り返すのに対し,セイヨウミツバチは,1花房上での1頭の採餌時間が長いことが明らかとなった.ニホンミツバチとセイヨウミツバチでは,200g以上の果実重割合が高く,花粉媒介者として有効であった. 2.パッションフルーツ: 通常の巣門が開放している巣箱では,直立型花時にミツバチが訪花し,花粉はすべて採取され,受粉は全く行われないことが確認された.そこで,柱頭と雄ずいの接触型花の時間帯にミツバチを出巣させる自動巣門開閉装置付巣箱を製作した.しかし花粉付着は確認されたが,付着量は十分ではなかった.そのため人工受粉と比べ果実の小型化が確認され,今後の検討課題となった. 3.:ブルーベリー: 雨天時に湿度が上昇し,湿度90%に達してもニホンミツバチの出巣数はセイヨウミツバチを大きく上回ることが確認された.さらに曇雨天や低温時におけるニホンミツバチの訪花活動は,天候の不安定な春に開花期を迎えるブルーベリーにとって非常に重要であると思われた. 今後選抜育種を行うことで,より改良された系統を造り出し,多くの農作物でニホンミツバチがポリネーターとしての利用される可能性は大きいと考えられた.
|