研究概要 |
砂丘農業地帯の地下水の硝酸汚染を防止し,環境保全型砂丘地農業の確立をめざし,鳥取砂丘東部に位置するラッキョウ栽培砂丘畑からの硝酸性窒素(NO_3-N)溶脱の実態とNO_3-N溶脱抑制のための肥培管理法を検討した. 1)鳥取県東部の砂丘農業地帯の地下水の多くはNO_3-N濃度が10mgN/L以上あり,ラッキョウ産地周辺地域では上昇傾向にあった.砂丘農地下層の粘質層上面に滞留する地下水水質は降水により短時間に変動し,組成は土壌溶液と類似していた. 2)ラッキョウ栽培砂丘農地からのNO_3-N溶脱の実態をモノリスライシメータにより実測した.NO_3-N溶脱は根域発達の不十分な生育初期に集中し,100mgN/Lもの高濃度で溶脱していた.肥効調節型肥料では生育初期の溶出抑制効果は小さかったが,元肥施用を根の伸長開始まで遅延することで,溶出を効果的に抑制できた. 3)根群域からの下方浸透量と塩分濃度の経時変化を記録できる装置(SCFS)を開発し,ラッキョウ栽培砂質圃場から溶脱するNO_3-N濃度の経時変化を明らかにした.センサーにより土壌中の溶質移動傾向を捉え,SCFSによって下方浸透水の水量・水質を把握できるモニタリングシステムを構築できた. 4)砂丘ラッキョウ圃場の土壌特性は面的に多様な分布を示し,養分保持に関わる性質には空間依存性が認められた.砂の粒度や土壌の養分保持特性は,ラッキョウの生育,品質及び収量に少なからず影響していた. 5)新規土壌改良資材(ハイドロタルサイト様鉱物,植物炭化物)を創出し,砂丘未熟土におけるNO_3-N溶脱抑制効果をポット試験で検証した.適量の資材施用は作物の生育を促進させ,NO3-N溶脱を抑制した.とくに植物炭化物は養分保持,水分保持特性を大きく改善した. 以上の結果から,作物根の生育・発達を考慮に入れた局所的な施肥がNO_3-N溶脱抑制の最も効果的な方法と結論した.
|