研究課題
基盤研究(C)
水銀はほとんどすべての生物に対して強い毒性を持つ重金属として知られている。本研究は、高度水銀耐性鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidans MON-1株の水銀還元能を利用して大量の水銀汚染土壌から省エネルギー的に水銀を気化・回収する技術の開発を目指している。A.ferrooxidans MON-1株は、20μMの塩化水銀存在下でも生育が可能な高度水銀耐性鉄酸化細菌である。これまで、本菌がNADPH依存性のmercury reductase活性を持つとともに、2価鉄依存性の新規水銀還元システムを持つことを明らかにしてきた。今回、水銀気化に対する電子供与体として2,3,5,6-tetramethyl-p-phenylenediamine(TMPD)を用いて、MON-1株洗浄細胞が嫌気的条件下で水銀を気化できること、この活性が1mMのシアンで完全に阻害されることを明らかにした。この結果はcytochrome c oxidase(cyt.c oxidase)が水銀の気化に関与していることを強く示唆している。鉄酸化細菌に特徴的な2価鉄依存性の水銀還元酵素による水銀気化機構をより詳細に解析するために、MON-1株から鉄酸化酵素の主要成分であるcyt.c oxidaseを高度に精製し、精製酵素がTMPDを電子供与体として水銀を気化できることを明らかにした(CHAPTER 1)。この結果は、末端酸化酵素としてのみ知られていたcyt.c oxidaseが、分子状酸素以外にHg^<2+>をも還元できること、即ち、分子状酸素の還元以外に水銀の還元にも関与できる多機能性酵素であることを強く示唆している。現在、鉄酸化細菌A.ferrooxidansに、有機水銀分解酵素(organomercurial lyase)遺伝子merBの存在は報告されていない。本研究の過程で、A.ferrooxidans株がMerB様活性を持つこと、無機水銀に最も耐性であったMON-1株が有機水銀分解に関しても最も高い活性を持つこと、MON-1株の無細胞抽出液からMerB様酵素活性が部分精製できること、等を世界に先駆け見い出し報告した(CHAPTER2)。
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