研究概要 |
きのこは保健薬のモデル化合物及び機能性食品素材として有望な資源である。TPAによって誘導される炎症を抑制する化合物は細胞増殖と関係した生理作用を抑制する可能性が高いと考え,化合物の探索を行ってきた。 1.本研究ではイボタケ科のきのこケロウジ(Sarcodon scabrosus)に含まれるsarcodonin類の構造と炎症抑制活性との関係を調べた。 1)ケロウジより関連化合物の探索を行ない,sarcodonin Aの19位デオキシ体であるsarcodonin B及び19位脂肪酸エステルを単離した。 2)sarcodonin Aをもとに種々の誘導体を導き,構造と活性との相関を検討し,19位及び14位の酸素原子の存在が活性発現に重要であると推論した。 3)sarcodonin Lを構造変換することにより誘導体に導き,炎症抑制活性を調べ,化合物の極性変化により活性が変化することから,活性発現には適度な脂溶性が必要であると結論した。 4)構造活性相関の結果を基にsarcodonin Aの19位に蛍光性のクロモフォアーを導入し,sarcodonin Aと同程度の強い炎症抑制活性を持つ蛍光性のanthranoyl-sarcodonin Aを合成した。この化合物はsarcodonin類の細胞内動態を調べるためのツールとしての利用が期待された。 5)sarcodonin Aのがん細胞に対する影響を調べ,この化合物が食道がんに対して特異的に強い細胞毒性を示すことを認めた。 2.食用及び薬用とされるきのこの炎症抑制作用を調べ,マゴジャクシ,ホウロクタケからトリテルペン類を,シイタケからは,benzoxcepin化合物を炎症抑制物質として単離した。これらについても現在さらに研究を継続している。
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