研究課題
基盤研究(C)
シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドは、細胞分化に関与し、神経機能の調整や可塑性を付加する新しい因子であることが明らかにされ、神経障害の治療への応用に注目が集まっている。このような状況を背景に、ガングリオシド類の化学合成研究が精力的に進められ、数多くの全合成が達成されてきた。しかしそれらの方法では医学・生物学的応用に十分な量の物質が得られておらず、本研究ではガングリオシド類の合成法を再検討することにより、それらの大量供給を可能にする方法論を確立することを目的とした。ガングリオシドの化学合成における問題は、以下に2点に集約できる。1.シアル酸を含む糖鎖の効率的な合成本研究では、従来困難であったシアリルα(2-8)/(2-4)シアル酸の構築に取り組み、ラクタム型シアル酸を受容体に用いることで収率の向上を達成した。更にこの方法を応用することにより、各種のポリシアロガングリオシド糖鎖の構築に成功した。2.糖鎖と脂質の縮合の改良従来、糖鎖とセラミドの縮合は十分な収率では達成されておらず、様々な方法が検討されてきた。本研究では糖鎖とセラミドをコハク酸で架橋した後にグリコシル化を行うという、全く新しい方法を開発することで縮合収率を飛躍的に向上させることに成功した。さらに、得られたグルコシルセラミドを受容体とする糖鎖の伸長反応に成功し、より効率的なガングリオシド合成法の確立に成功した。
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